歌をつくる

休業期間中はいつもよりも自由時間が増えたので少しづつ曲作りもやっていた。
ところがいざ「曲でも作るか」と思い立った時、いつも戸惑ってしまうのだ。

「あれ?俺は一体どうやって曲を作ってたんだっけ?」と。

本格的に音楽活動を始めた5年前から考えたら「完全な満足」と言えないまでも、「まあまあいいんじゃないか」と思えるくらいの曲は少しづつ作れるようになってきた。
それでも人から「曲ってどういう風に作るんですか?」と訊かれたりするたびに、どうも簡単には答えられなくて言葉に詰まることが多く、「俺が訊きたいよ!」なんて答えてしまう。
今回は曲作りの過程を改めて考えてみよう。

まず、一口に「曲作り」と言っても楽曲には種々様々、たくさんのジャンルがある。オーケストラの曲を作るのか、民謡曲を作るのか、ピアノのインストゥルメンタルの曲を作るのか、どのジャンルの曲を作るかによって作り方は全く異なってくるだろう。
僕が作るのはいわゆるポピュラー音楽の歌である。その中でもとりわけ簡単で単純なギターの弾き語り曲が多い。もちろんバンドアレンジを前提にしたものもあるんだけど、基本的にはアコースティックギター1本でコードをジャカジャカ弾いて歌うだけのシンプルな音楽だ。なので、もしあなたが米津玄師や中田ヤスタカのような打ち込み曲を作りたいのであれば全く参考にならないと思うのでその点は了承していただきたい。

そして、そんな簡単な曲でも、千人いるなら千通りの作り方があるのが創作の面白いところだと思う。
僕の場合は「よし、曲でも作るか」と思って作れたことは一度もない(もしかしたら一度くらいはあったかもしれない)。なんの取っ掛かりもないところから曲を作るのは非常に困難で、なにがしかのアイデアが必要になる。あえていうならば、そのアイデアを探すところから曲作りが始まっていると言ってもいい。

そして、僕が主として作りたいのは曲というよりも歌である。
じゃあ歌ってなんだ?曲とどう違うの?と考えると、アカペラの歌を想像してもらうとわかりやすいと思う。メロディがあり、リズムがあり、そしてここが重要なんだけど、言葉がある。これ自体、まあ曲であるとも言え、つまり歌だけの曲もある、ということだ。そして歌とは「メロディ(リズムを含む)と言葉が一体となったフレーズである」と言えるだろう。逆に歌にないものは伴奏、中でもとりわけ重要な要素は和音だと思う。
で、僕の場合、まず歌を作ってそれに合わせて伴奏や和音を考える。ただ、大抵は歌を作ってる時点でイメージがあるので大体こんな感じの和音、伴奏、とある程度決まっていることが多い。
逆に伴奏、和音に合わせて歌を作ったことはない。ない、というかできない。でも、そういう作り方をしている方も中にはいらっしゃると思う。

随分と前置きが長くなってきたが、要するに僕がまず作るのは鼻歌だ。思い付いた言葉をメロディやリズムをつけてふんふんと歌ってみて、しっくりくるところを探す、というのが主な作業になる。この時点で音の鳴る楽器のようなものは一切必要ない。大抵は寝てる時、自転車に乗っている時、散歩してる時、などに思いついてやっている。

そう、「思いつく」というのが一番しっくりくる。これが最初に述べた「アイデア」となる。
ここで注意して欲しいのだけど、これってよく「降りてくる」という言われ方をするけど、厳密には何もないところに「降りて」はこない。ぼんやりと、なんとなく考え事のようなことをしている時に歌えそうな言葉を「思いつく」というのが多分、僕が作ってきた歌で一番多いパターンだと思う。考えのないところにアイデアはこない。何もしてないところに自動的に歌がやってくる、なんて都合の良いことなんてないのである。だから歌を「思いつく」ためには脳みそを使って色々ごちゃごちゃ考える必要がある。

あと、知ってる方もいると思うけど、僕はノートに歌詞を書かない。というか「書けない」というのが事実に近い。書いても書いても歌を作れなかったからいつしか書くのをやめてしまった。
頭の中で、あるいは実際に歌いながら作っていって、歌ったものがしっくりきたらそれで良し、よくなかったら歌いながらメロディ、リズム、言葉の細かいところを直していく。
それじゃあ忘れてしまうじゃないか、と思うかもしれないけど、そのフレーズを忘れてしまうくらいなら印象に残らない、良いフレーズじゃなかった、ということだし、あと大抵は「これはいいぞ」という強い思い込みがあるから2,3日は忘れない。だけどそのまま4日も5日も放置しているとさすがに忘れてしまうから、2,3日以内に何度か歌って展開を考えたり修正したりする作業を行い、少しづついわゆる長期記憶というやつに移していくともう忘れない。「鉄は熱いうちに打て!」の精神である。

長々と書いてて思ったけど、これってまだまだ、ほんのさわりの部分ですね。フレーズを思いついて歌えるようにしていく、というフェーズで終わっています。
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